プログラム概要

頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム:アジア・アフリカの持続型生存基盤研究のためのグローバル研究プラットフォーム構築

日本学術振興会(JSPS)が平成23年度から新たに開始した「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」に、京都大学東南アジア研究所大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究資料センターの申請した「アジア・アフリカの持続型生存基盤研究のためのグローバル研究プラットフォーム構築・プロジェクト」(平成24年度~平成26年度)が採択されました。

 

頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム(以下、頭脳循環プログラム)とは?

頭脳循環プログラムは、日本学術振興会(JSPS)が、「最先端研究開発戦略的強化費補助金」にもとづき、国際共同研究に携わる若手研究者の海外派遣を支援し、国際的な頭脳循環の活性化を通じた我が国の学術の振興を図ることを目的に設立した競争的研究資金制度です。このプログラムの実施を通じて、若手研究者が世界水準の研究に触れ、世界の様々な課題に挑戦する機会を拡大するとともに、海外の大学等研究機関との研究ネットワークを強化します。

本プロジェクトについて

現代世界における喫緊の課題は、地球社会の調和ある共存です。このために重要な鍵となるのは、台頭するアジア・アフリカの生存基盤持続的な発展のための方策を学術的に明らかにすることです。本プロジェクトは、この課題に取り組むために、若手研究者をアジア・アフリカおよび欧米の研究機関に派遣して共同研究を行います。これを通じて、日本、アジア・アフリカ、欧米の地域研究拠点を結び、アジア・アフリカの包摂的かつ持続的な発展を可能にするための世界的な研究プラットフォームを構築します。

京都大学の東南アジア研究所大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究資料センターは、地球圏・生命圏・人間圏の調和的な発展をめざす文理融合型の持続型生存基盤研究を推進してきました。この日本発の発展モデルをグローバルに発信し、継続的な学術交流を通じて、国際的に通用する枠組みへと磨きをかけます。従来の国際開発研究にかかる欧米バイアスを是正するために、日本とアジア・アフリカの密接な知的リンクをさらに強化した上で、欧米の研究拠点とも学術交流を図ります。

本プロジェクトでは、次の三つの研究課題をおきます。

これらの課題遂行のため、地域研究上の研究環境が卓越しており、従来から京都大学が学術交流を行ってきた関係諸機関へ若手研究者を派遣し、協力関係の強化を図ります。

若手研究者の派遣と国際共同研究との関連

京都大学においては、フィールドワークを根幹とした文理融合型の地域研究が進展しており、世界的にも高く評価されています。自然科学を除いては、日本発の研究として、世界的な競争力を有する数少ない領域の一つです。特に、京都大学が提唱してきた、地域研究に基づく持続型生存基盤研究の領域は、研究上も実践上も、世界の中心的な課題に直結しており、これからの学術的潮流においてきわめて重要な位置を占めていく可能性があります。

京都大学の地域研究は、すでにアジア・アフリカおよび欧米における諸地域研究機関との学術的交流を活発に行っていますが、その中核となっている中堅以上の研究者は相手国に長期滞在する機会があまりなく、組織的かつ継続的なかたちでの国際的共同研究や若手の頭脳循環が十分に行われているとはいえません。また、本プロジェクトの課題である持続型生存基盤研究は世界的にも注目されている新研究領域であり、現時点でここに集中して国際的な共同研究を展開することは、本領域での近未来における日本の知的リーダーシップを確立する上で大きな意義を有します。本プロジェクトを通じて、若手研究者をアジア・アフリカ諸国の地域研究拠点に派遣し、現地の研究者との共同フィールドワークを通じた共同研究を展開すると同時に、さらに欧米の地域研究拠点への派遣を通じて、アジア・アフリカの視点から国際的な開発研究にかかる理論的枠組みの再検討を行うとともに、グローバルな比較や連鎖の視座を身につけさせます。

相手側の地域・国と研究分野等との関連

本プロジェクトでは、アジア・アフリカ地域研究に従事する若手研究者を、東南アジア(インドネシアのボゴール農業大学、マレーシアのサラワク大学)、西南アジア(インドのデリー大学、トルコのアンカラ大学)、アフリカ(エチオピアのアジスアベバ大学、カメルーンのヤウンデ第1大学)に長期派遣し、それぞれの地域における持続型生存基盤について、現地の研究者と共同研究を行います。これらの諸研究機関は、京都大学の地域研究者が密接な協力関係を結んでいる場です。またイギリスのロンドン大学政治経済学院、アメリカのコーネル大学、オランダのライデン大学という、欧米の地域研究の領域において、先導的な役割を果たしている諸研究機関とも国際共同研究をおこないます。日本の京都大学をハブとして、これらのアジア・アフリカおよび欧米の研究拠点を結びつけることにより、持続型生存基盤研究における世界的な研究プラットフォームを構築すると同時に、そこにおける日本の学界のリーダーシップを確立します。 

国際共同研究:計画概要

アジアとアフリカは、潜在的には紛争をもたらしうる多様な民族・宗教・文化を持ちながら、その多様性が相互に交響する多元共生社会を生み出してきました。両地域は、伝統的な価値を維持しつつ、豊かな自然バイオマスを原動力として独自の生存基盤を確立し、「在地の知」に基づいた社会・文化基盤を築いてきました。しかしながら、一方で、生物多様性の喪失や熱帯雨林の減退、エネルギー問題、災害への備え、貧困と経済格差など、生態環境や社会制度に依然として大きな課題を抱えていることも事実です。本プロジェクトは、これらの課題を克服するために、本学が創出した持続型生存基盤研究をアジア・アフリカ、そして欧米に展開し、地球環境への負荷を軽減しつつ持続的に社会発展するための方策を示すとともに、持続型生存基盤パラダイムを中心理念としながら研究教育体制と人的ネットワークを強化することを目的としています。

国際共同研究:到達目標

学問的成果
(1)アジア・アフリカ・欧米における「生存基盤」研究の人的ネットワークおよび学術コミュニティを強化し、学術的な理念の共有を促進します。

(2)アジア・アフリカ・欧米の研究ハブとして、国際的に傑出している我が国の文理融合型地域研究を両地域の学術界に普及し、問題対処・解決を志向する地域研究をさらに深化させます。

(3)我が国とアジア・アフリカ・欧米の学術界との包括的なアカデミック・パートナーシップ体制の確立によって、相互交流・啓発を通したアジア・アフリカ発の地域研究として世界に発信します。

社会的成果
文明共生と環境共生に立脚した持続型生存基盤を、アジア、アフリカ、欧米を架橋する戦略的パートナーシップ促進を支える理念として展開します。我が国のさらなる成長にとって必須条件であるアジアとアフリカ諸社会の持続的な発展に資する実践的研究を目指します。

国際共同研究:期待される成果
◎生存基盤研究に関する人的ネットワークの拡大 / グローバル研究プラットフォーム形成

お問い合わせ先
東南アジア研究所 頭脳循環プログラム事務局
〒606-8501京都市左京区吉田下阿達町46
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